USCPA 難易度はどの程度?簿記や会計士との比較でわかる難易度の真相

はじめに

USCPAの難易度はどの程度だと思いますか?

日本では日本の公認会計士試験、簿記検定などとよく比較されますが、実態はすべて受けたことがある人にしかわからないですよね。

また、英語での試験ということも相まって、TOEICでどの程度のスコアが必要なのか、なんかも気になるところかと思います。

本記事では現役の公認会計士・USCPAである筆者が、試験の難易度についてご紹介します。

USCPA試験とは

USCPA試験とは、アメリカの公認会計士試験であり、世界で最も広く認知されている会計士資格です。

試験科目は以下の4科目からなります:

1. Financial Accounting & Reporting (FAR):財務会計

2. Business Environment & Concepts (BEC):経営環境と概念

3. Regulation (REG):法規

4. Auditing & attestation:監査

以上のように、会計だけではなく、関連法規や経営学など多岐にわたるビジネス知識が必要となる試験です。

つまり、経済やビジネスを多面的に理解できる素養が身に付きますので、長きにわたりビジネスマンから根強い人気を持っています。

日本においても多面的なビジネスへの理解を示す資格としての地位は高く、現に日本の公認会計士試験合格者が多く就職する「監査法人」にも一定数USCPA入社の方がいらっしゃいます。

税理士法人でも「会計力+英語力」の需要は高く、特に国際課税部門や移転価格部門などでは税理士試験合格者と同様に求人があります。

(ちなみにこのサイトからいろいろ見れます:弁護士・公認会計士・税理士の求人・転職なら【MS-Japan】

さて、このように日本でも高い評価をもつUSCPA試験、実際にはどの程度難しいのか見ていきましょう。

USCPA試験の難易度 – 総評

さて、こちらは筆者の所感になりますが、「本腰を入れないと受からない」試験であることは間違いないです。

試験の難易度、というのは、①必要な時間と、②内容の難しさの二つに分解することができますので、順に見ていきましょう。

必要時間

まずもっとも大きな要因である、「必要勉強時間」から見ていきます。

こちらが先日の記事で紹介した通り、1200~1440時間ほどは見積もるべき、とご紹介させていただきました。

(詳しくは以下の記事へ)

これを一年で考えると、ひと月あたり100時間、一週間で25時間。

仕事をせずに専念できる環境があればそこまで負担は大きくないですが、仕事をしながら受けるには、1年間私生活を削りそれなりの覚悟が必要になります。

必要時間が1000時間を超えてくる試験は、そもそもそこまでたどり着く前に辞めてしまう人や、準備不足のまま試験を受け失敗する人が多いので、必要時間からすると難関試験であると言えます。

内容の難しさ

では次は内容面です。

難関というイメージとは反対に、実はそこまで地頭の良さや理解力を要する試験ではありません

論理的思考力を問う、というよりは知識量や、知識を使った問題解決力などを問う形式になっています。

したがって、根気強く知識を入れて問題演習に取り組める継続力こそ、合格のための重要な要素になっています。

簿記や計算問題に苦手意識がある、という方がいるかもしれませんが、しんどいのは最初の200時間ほどのみです。

簿記などの計算問題は、実はみんな最初は解けません。同じ問題を何度も反復することでパターンを身につけ解けるようになるのです。

むしろ怖いのは、会計・経済・経営・会社法務・税務などに全く興味が持てないケースです。

これらの分野にまったく興味がない、という方の学習ははっきり言っておすすめしません。

一方、これらのどれか一つにでも興味を持てた場合は、それだけでこの試験への適性があると言えます。

日商簿記検定との比較

さて、では関連試験との比較を行い試験の難易度を見ていきましょう。

まずは簿記・経理検定の登竜門、日商簿記です。

結論からすると、日商簿記検定1級よりも大変、というのが筆者の見解です。

では順に見ていきます。

必要時間の比較

日商簿記検定1級は簿記検定の最高峰の試験とされ、そのレベルは公式ホームページにて以下のように定義されています。

極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。
合格すると税理士試験の受験資格が得られる。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。

日本商工会議所公式HPより)

必要学習時間は公式なものがなかったのですが、おおむね600~800時間というのが一般的なようです。

このことから明らかなように、トータルの学習時間が1200~1440時間ほど必要になるUSCPA試験のほうが必要時間が多いということが言えます。

この要因は受験科目の違いによるもので、次項にてあわせて解説します。

内容の難しさの比較

さて、内容についてもUSCPAのほうが難しい、と言いたいところですが、こちらは両者の難しさの性質が違うことを理解する必要があります。

すでにご紹介した通りUSCPA試験は会計だけでなく監査は法務も含む4科目で構成されています。

一方、簿記一級は「商業簿記+会計学」、「工業簿記+原価計算」という大きな二区分になります。

科目の対応イメージ:

で、違いとして現れる内容の難易度は以下です:

USCPAには監査と法務(暗記系科目)があるため、簿記一級よりもその分学習範囲が広い

・簿記一級はUSCPAよりも複雑な総合計算問題が出題され、かつ計算の精度が重要になるため、計算練習にかかる時間についてはUSCPAのほうが少なくて済む

したがって、総合するとUSCPAのほうが最終ゴールまでの時間がかかることから「USCPAのほうが大変」と記載しましたが、USCPAに合格したからといって簿記一級の複雑な総合問題を解けるわけではないです。

計算重視の簿記一級と、総合力重視のUSCPAでそもそも試験の性質やその勉強方法も異なるということです。

日本の公認会計士試験との比較

次は日本の会計士試験との比較です。

日本三大国家試験のうちの一つと言われ、国内最高クラスの難易度となっている試験です。

必要時間の比較

いろいろと言われていますが、実体験からすると必要勉強時間は3000~4500時間程度になってきます。

参考:

まず年に2回の短答式試験に受かったうえで、8月の論文式試験(二次試験)に合格する必要がある、という試験制度を採用している点で、いつでも受験可能なUSCPA試験との違いがあります。

仮に落ちた場合はまた来年、となってしまい、「3年かけて累計5000時間勉強して合格」などの長期戦が起こりうるため必要時間は圧倒的に日本の会計士のほうが多いと言えます。

内容の難しさの比較

さて、内容についてもお察しの通り日本の公認会計士のほうが求められる水準が高いです。圧倒的な必要勉強時間からも想像しやすいかと思います。

両試験の科目の対応イメージ:


(※なお、6科目目の経営学は日本では選択科目)

上記の通り、実は日本の会計士で学ぶ範囲は基本的にUSCPAでも学びます

一方で、求められるレベルは以下のように異なります:

・日本の会計士は簿記一級レベルの財務会計及び管理会計の計算スピード、精度が必要になるが、USCPAはこのレベルの計算鍛錬は不要

USCPAは一科目ずつ1年半にわたり好きなタイミングで受験可能だが、日本の会計士は全科目一度に受ける必要があり全科目並行して学習を進める必要がある

・日本の会計士は論文式試験対策として膨大な理論や法令を理解・暗記して論述に耐えうるレベルでのインプットとアウトプットが必要であるが、USCPAではBECのライティング以外で論述は不要

以上を総合すると、試験としての難易度は日本の会計士のほうが高く、費やすこととなる時間も圧倒的に多いということがわかります。

必要な英語力について

そして忘れてはならない要素、英語です。

USCPA試験はすべて英語でなされることから、当然日々の問題演習も英語で行います。

学習にあたってどの程度の英語力が必要かというと、正直義務教育レベルの英文法がわかれば最低限学習可能、というのが私の考えです。

もちろんこのレベルでは初見の問題はまったく解けません。

ただ、USCPA試験で出てくる英単語や言い回しは会計監査実務に特化した専門的なものが多く、たとえ大学受験で英語が得意だった人でも少なからずこの試験のために単語や言い回しを覚えなおす必要があるためです。

もちろんビジネス英語に慣れていればいるほど学習は楽になりますので、TOEICで覚えた英単語やリーディングのスピードなどは決して無駄になりません。

TOEICでいうと600点程度の語彙力があれば専門的な単語以外は理解できますので、もし英語力がネックになり迷っている人がいるのなら、問題演習の都度単語を覚えていけばさほど英語力を気にする必要はない、ということを覚えていただければと思います。

例えばUSCPA予備校大手のアビタスでは授業・テキストなどのインプットは日本語でなされ、英語の問題集も日本語解説が充実していることから、いつのまにか英語が読めるようになるよう工夫されています。
参考:USCPAを目指すならアビタス。

おわりに

総括すると、

・USCPA試験の勉強時間は一年がかりの試験となり簿記一級よりは計画性が必要となるが、日本の会計士試験ほどの勉強時時間が必要なわけではない。

・USCPA試験は内容が特別難しいわけではなく、経済に興味を持てたら十分理解できる内容。

といえるでしょう。

途中でも触れましたが、この試験で学習する内容は基本的に日本の公認会計士試験と同様です(法律関係除く)。

裏を返せば、日本の会計士の4分の1ほどの学習時間で、そのエッセンスを英語で学ぶことができる試験、ともいえるでしょう。

試験後にどんな自分や将来を得たいのか、人それぞれ違いがあるかとは思いますが、試験の結果得られるメリットや必要となるコストや労力をしっかり見極め、資格学習に取り組むことが重要です。

 

この試験を乗り越えた先には、
①次のようなキャリア・年収を得ることができます:

②働き方は次のようなものです:

このサイトでは、引き続き資格学習や業界情報についても発信してまいりますので、上記の記事もご参考にしていただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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