アメリカで働く日本人会計士の仕事とは。-③アメリカで日本人が会計士/USCPAとして働く方法

今回は、日本人がアメリカで会計士として働く場合、どんな入り口があるのか紹介します。

「一度は海外で働いてみたい!」と思ったとき、会計士はいろいろ選択肢がありますので、自分のやりたいことと入り方があっているかイメージを掴んでおくことが大事です。

なお、もしまだ第一回の記事を読まれていない方は:
アメリカで働く日本人会計士の仕事とは。-①どんな人とどんな仕事をするのか紹介します。
まずはこちらから読んでいただき背景を理解していただければよりイメージがつかみやすいです。

日本人がアメリカで会計士として働くための方法 – 概要 –

以前こんなツイートをしました。これが今回の記事の大枠です。

もっと大きく分けると、

1)現地に直接入社する方法
2)日本から出向で行く方法

の二つ、ということになります。

(私は日本からの出向者ですが、部下は現地入社で、いずれもノウハウをもっています)

さらにざっくりまとめると以下の4通りになります。(なお、現地入社の2つは日本人にとってメジャーな二つを示しています。)

では以下で見ていきましょう。

現地採用のルート

日本人が現地Big4から採用をしてもらうためには、大きく以下の2つのルートを経由します。

①現地大学からのインターン
キャリアフォーラム(ボストン、LAなど)に参加し申し込む

いずれの場合もスタッフらとの電話面談や食事会などを通じて語学力を見られ、その後管理職との面談になり採用へ進んでいく、というものです。

なお、②のキャリアフォーラムは日本語+英語を話せる人が前提なので、ある程度日系サービスグループへの採用が前提になっています。そのためもし日系ではなくローカルチームで頑張りたい場合はやはりアメリカの大学に行くことが近道になります。

なお、キャリアフォーラムでは転職組も多くみられ、「現在日本で経理をしていてUSCPAに合格しました」という方などもこのルートであればチャンスはかなりあり、実際にそういう方も多く申し込まれます。

私自身こちらに来るまであまり知りませんでしたが、キャリアフォーラムのおかげでかなり門戸は広い印象です。

あとは英語でディスカッションできるくらいしっかり語学の練習をしておけば、日本からでもチャンスはたくさんあります

現地採用:現地大学に通うか、キャリアフォーラムを使う!
→キャリアフォーラムに来るようなメンバーは採用の主担当クラスなので、ここで気に入られればそのまま採用やインターンなどもあり得ます。つまり、日本の大学卒だったとしてもチャンスはあります!
USCPAについての参考記事:

USCPA 難易度はどの程度?簿記や会計士との比較でわかる難易度の真相



日本からの出向ルート

各Big4と呼ばれる日本の監査法人は、各国のメンバーファームに対して出向者を送りあう制度を持っています。

(例:新日本監査法人からアメリカのE&Yへ派遣。イギリスのデロイトからトーマツに出向、など)

このルートを通るためには、まず日本かアメリカの会計士試験に合格し、日本の監査法人に入る必要があります。(なお、出向に際してUSCPAなど現地のCPA資格は求められません。ライセンスを二つ持っていると部下から尊敬される、という程度です。)

先ほどのTwitterでも私見を述べていましたが、個人的にはこの出向制度を使うのが最も効率的・効果的に経験を積むことができると考えています

では、以下でその出向の詳細について紹介します。

トレーニー制度(研修生)

まずはトレーニー制度(研修生)から紹介します。呼び方は各法人さまざまなので、本記事ではこの呼び方で統一します。

対象となるのは若手です。具体的には入社4年目~7年目が対象になっており、いわゆるシニアになる直前からマネージャー1年目くらいまでの若手が対象になっています。

つまり、新卒で監査法人に入社した人なら、26~30歳くらいで海外派遣のチャンスが回ってくる、と言えます。

出向期間も各法人2年弱と短く、駐在員のような収益責任も重くないため、アメリカでの英語の実務やマネジメントを経験して帰ってくるという研修的な意味合いの強い制度で、若手に人気です。

デメリットとしては、海外赴任手当のようなものが非常に薄い(というかほぼない)ことがあげられます。

日本の総合商社だとトレーニーは海外出張扱いになるようで、出張手当だけで生活して給与で丸々貯金ができるようなのですが、監査法人では現地に「出向」なので別途雇用契約を結びなおします。ビザはL1かL2です。

基本的に日本法人からの補助なしで送り出されますので、アメリカの都市部に送り出された場合は家賃と生活費で年収がすべて消え、旅行代は完全に貯金を切り崩すという悲しい実情があります。

それでも補って余る貴重な経験、帰国後の出世(もしくは転職市場価値増)がある程度約束されており、依然人気な制度です。

駐在員

駐在員で対象になるのは若手のマネージャー~若手のシニアマネージャーです。入社年次で行くと7年目~12年目ほど、新卒入社なら29~34歳ほどでチャンスが回ってきます。

出向期間は4年を超える場合がほとんどで、現地の日系企業のコーディネーション全般を対応します。

厳しい収益責任とマネジメント期待を負っているため、労働時間は日本に比べても長く、家に帰ってからも夜中まで毎日働くなんてこともしばしば。

その分待遇は研修生に比べると手厚く、現地の家賃は全額日本法人より支給されているケースが多いようです。別途海外駐在手当的なものもありますが、商社のように年収3000万円を超える、なんてことにはなりません。アメリカは家賃が高いので、家賃補助も入れて円換算すると年収2000万円ほどになるでしょう。

手当が厚い分期待も厚く、帰国後数年以内にパートナーへ昇格する人が多い、王道の出世ルートです。その分派遣時の競争も非常に厳しいので、有名クライアントでしっかり実績を積み上げて早くのうちから駐在希望を見据えた動きが必要です。

監査法人からの出向を勧める理由

いくつかありますが、最終日本で活躍することが前提のため、というのが最も大きい理由です。

出向者はいずれ日本へ帰国し、さらなる活躍が期待されています。この、期限付きで海外に行く、というのが会計士の経験としてはちょうどよい、というのが私の考えです。

日本人はどこまで英語ができるようになっても日本人なので、大きく活躍していくフィールドは「アメリカ人の中」ではなく「英語を喋れる日本人」としてのほうが価値を出しやすいですし、需要もあります。

また、アメリカの大学に自費で通う場合は非常に高額な費用が掛かりますが、出向者であれば渡航費はすべて会社が負担します。

語学研修や海外出向などの制度をうまく使うことができれば、日本の監査法人の待遇は実は給与額面以上にとても良い、と言えます。

使える制度はしっかり活用して、会社の費用でいろいろ成長してしまいましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

あまり情報がない、会計士として海外で働く方法について、現地採用と海外出向のケースに分けてまとめました。

私自身出向者として働いており、入社時は英語がからっきしダメでしたが、監査法人の語学研修や英会話の補助制度を利用してなんとか海外派遣レベルまで引き上げました

使えるものはなんでも使わないともったいないですもんね。

次回は海外で働く会計士に求められる英語力について紹介しようと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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