今回は監査法人への就職のための情報です。
現在2019年11月の合格発表を待ち面接準備をしている、という方も多いでしょう。
その際に意外と情報を集めにくいのが、「東京と地方の違い」です。今回は監査法人の地域差について、就職の観点からまとめです。
私の就職の際は氷河期で、「なぜこの法人で、なぜこの事務所なのか」ということをOB訪問などを通じて徹底的に調べました。
本記事の内容はこの時の調査結果を、入社後の事実確認により補足したものなので、これから監査法人に入りたい方の面接対策だけでなく、事務所ごとのイメージを持つための参考にもなると思います。
では順に見ていきましょう。
前提:一般企業との採用活動の違い
前提として、監査法人の就職活動はエリアごとに全く別で行われます。
もちろん東京で採用されても大阪で採用されても同一の法人であることに変わりはないのですが、例えば大阪で働きたいのであれば大阪の説明会へ参加し、面接を受ける必要があります。
したがって、一般事業会社のように本社一括採用→勤務地へ、という流れではないということは理解しておきましょう。
つまり、面接を申し込むときには「なぜこの法人がいいか」にとどまらず、「なぜ東京で働きたいのか」もしくは「なぜ東京ではなく大阪なのか」ということも自分なりの考えをまとめておくことが重要です。
では以下で違いを見ていきます。
クライアント構成の違い
まず最初に異なるのは、クライアントの構成です。
東京には日本を代表する大企業の本社が集中しているため、大規模監査契約が非常に多いです。
また、大規模監査契約のなかで重要な要素となるメガバンクも東京に本社がある、という点も大きなポイントです。
メガバンクをはじめとする金融機関の監査は報酬が非常に高額で、かつチームも場合によっては数十人規模になっており、監査法人のなかでも異色な事業部になります。
売上数兆円を超えるような超大規模ジョブや、大規模金融機関の監査を経験したい場合は、東京での就職を選択する必要があります。
一方中京や関西ではこのような超大規模ジョブが少ないですが、全くないというわけではありません(例:あらた監査法人のトヨタや、あずさ大阪のパナソニックなど)。
中京や関西では、上場企業では”ミドル”と呼ばれる売上規模1千億~数千億円程のクライアントの割合が東京と比較して多くなります。
まとめると以下です:
仕事の違い
では上記のクライアントの違いを受けて、仕事はどう変わるのでしょうか。
大きく差が出るのは、「金融監査を含む大規模監査」か「それ以外か」というところです。
大規模監査では、時には数十人を超えるチームでひとつの会社を監査します。
したがって、監査という仕事の全容を把握するのにはかなり時間が必要になることもしばしばです。メガバンクの監査では「一年間預金と確認状の対応ばかり」ということもあります。
一方、大きな仕事に関与して日経新聞のヘッドラインに載るような決算の監査ができるというのは他では得難い経験であるのも事実です。
このような超大規模クライアントでは内部統制や決算体制もしっかりしており、お手本のようなコーポレートガバナンス、決算実務を学ぶことができます。
では中規模監査では、基本的に10名前後のチームでの監査対応になります。
このような監査では基本的に入社4~5年程度ですべての勘定科目の監査を一巡することができ、連結や海外対応も含む一通りの監査を学ぶにはちょうど良い規模です。
小規模監査となるとパートナー含めて3~4名で回してしまうことが多く、その分監査一巡やマネジメント経験などを早くに経験できるメリットがあります。一方、連結の対応が必要なかったり、重要な監査論点がなかったりと、経験値に偏りが出てしまうという面もあります。
東京かそれ以外か、という違いが出るのは、東京だと少なからず超大規模ジョブへの関与可能性がある、という点です。
もちろん東京にも中規模ジョブや小規模ジョブはありますが、最初に関与するクライアントが希望通りにならないことはよくある話です。
これは人によりメリットにもデメリットにもなりますので、重要なのは事前に理解して、面接時に希望を伝えられるようにしておくことです。
この点、中京・関西では超大規模ジョブは非常に限定的ですので、基本的に希望していないと配属されることはありません。また、中規模の監査ジョブの割合が多くなることから、ある程度想定通りのキャリアを歩むことができるでしょう。
逆に中京・関西で「やっぱり大規模ジョブをやりたい」となった時は東京への異動希望を出せますが少し苦労しますので、入社前から理解しておくことはやはり重要です。
出世スピードの違い
さて、生々しいですが、やはり出世スピードというのも紹介しておきます。
実際、地方よりも東京の超大規模ジョブのほうがスピード出世している人は多いです。
理由はいろいろありますが、
・報酬規模が大きく法人内の発言力が強い
・大人数のチーム構成になるため、マネジメント力が高い人間が育ちやすい
・そもそも優秀な人間が集まっている
という3つが大きいように思います。
大規模ジョブはそもそもチーム・部門の社内地位が高い、ということも実際ありますが、
それ以上に、「そもそも優秀な人間が集まって、大人数を効率よく動かすマネジメントを一生懸命やっている」わけですから、管理能力が高い人間が育ちやすい競争環境であるというのも間違いないです。
一方中京・関西では、ミドルクラスの監査対応がメインとなる結果、一人でなんでもできる会計士が多くいる印象です。
もちろんこの能力も専門家である以上必要ですが、社内昇格という意味では個人の能力よりもマネジメント能力が重宝される傾向にあり、やはり平均すると東京の大規模ジョブ関与者のほうが昇格は早いというのは事実です(その分競争も激しいです)。
年収・生活の違い
年収等も気になるところかと思います。
実は年収は勤務地によってほとんど変わりません。
基本的に首都圏勤務者には別途手当が支給されていますが、月額2~3万円ほどです。
監査法人には家族手当や住宅手当などが一切ありませんので、この差額は実質家賃に消えます。
地方のほうが家賃や物価が圧倒的に低いので、生活は東京から離れるほど楽になります。
面接対策:地域を意識した志望理由例
さて、上記でいろいろと違いを見ていきましたが、面接で聞かれたときにはどんな回答が想定されるかまとめましたので、参考にしていただければと思います。
東京を望む場合の志望理由例:大きなジョブでマネジメント力を磨きたい
①大規模ジョブに入り、様々な人と共に働く経験を通じて、大きなプロジェクトを管理できるようなマネジメント力を磨きたいと考え東京事務所を希望した。
②東京事務所には大規模ジョブだけではなく中小規模ジョブもあるため、大きな仕事に関わりながらも比較的小規模なエンゲージメントにも関与でき、よりさまざまな経験ができると考え東京を希望した。
地方を望む場合の志望理由例:早く一人前になりたい
①勘定科目や監査経験面で早く一巡したいため、ミドル規模のジョブが多い地方事務所を希望した。
②中規模チームにて経験を積むことで、大規模ジョブに入るよりも早くチームの中で主力メンバーになれるチャンスがあると考え希望した。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
外からはわかりづらい監査法人の内情について、すこしでもイメージを持っていただければ嬉しいです。
皆様と一緒に働ける日を楽しみにしています。
最後までお読みいただきありがとうございました。