持株会社・ホールディングス経営における会計:今さら聞けない連結会計の仕組みや実務とは。

図解での実例

連結会計はイメージを持つことが最も大切ですので、最も代表的な2つ(ⅰ)投資と資本の消去と(ⅱ)内部取引消去のみのケースを想定します。

上記では理解のために資産や純資産の内容を分解しています(ex. 資産→現金と子会社株式)。

上記の例の状況を整理すると以下です:

1. P社が保有するS社株式が300ある。

2. S社からP社への内部売上が800ある(=P社では同額仕入)。

となります。

これらの数値は親会社であるP社と子会社であるS社の間での取引であり、企業集団全体の観点からみると外部との取引が一切発生していません

したがって、これら(図解での網かけ部分)は”連結修正”として消去されます。

その結果が以下で、連結数値は網かけを除いた合計になっていることが理解できると思います。

連結は仕訳で考えてしまうと複雑になってしまいがちですが、上記のようにB/SとP/Lの図をそれぞれ積み上げていくイメージを持っていれば、特に難しいことをやっているわけではなく、対応する箇所を消していきあるべき形にもっていきます。

ポイント:連結会計はあくまで各社の数値を積み上げた単純合算がベースになり、企業グループ内の取引や投資を調整したもの。
計算が複雑になり迷ったときも図解の積み上げイメージを忘れない。

連結決算実務上の留意

連結決算を行う会社で、留意すべきポイントは大きく以下の3つに集約されます。

連結パッケージの運用

子会社から親会社がどうやって数値を収集するかというと、「連結パッケージ」を運用しています。

これは特にフォーマットが決まっているわけではなく、親会社が欲しい情報のフォーマットを子会社に提供し、子会社側でインプットしてもらっているものにすぎません。

含まれるのはB/S, P/L, 株主資本等変動計算書(S/S), キャッシュフロー計算書(CFS)といった財務諸表に加え、各勘定の明細(固定資産増減表やグループ内の債権債務・取引明細、セグメント情報など)など多岐にわたります。

上場企業であれば、注記開示に必要な細かい情報(デリバティブやリースなど)も子会社から入手しなければならず、親会社側でどんな情報が必要なのか、子会社が入力している情報が意図した情報なのか管理して運用していく必要があることから親会社連結決算チームの重要な役割と言えます。

月次分析としての活用

上記の連結パッケージですが、やはり子会社側でも取りまとめる親会社側でもかなり手間がかかります。

したがって、単に制度対応としてしまうのは非常にもったいないので、経営への活用が望まれるところです。具体的には経営管理目的での月次決算情報活用になるでしょう。

月次ではBS, PL, CFSといった基礎的な情報に加え、為替予約やデリバティブなど、財務諸表で未認識だがリスクの高いものについても別途情報を入手できる仕組みを作っておくことが連結経営において重要になります。

また、これらは内部の管理目的で使用することから、制度会計と管理会計の連動を意識し、単なる制度対応に終わらないよう内部報告分析への活用や情報の統合への工夫が連結経営上重要になります。

 

連結決算早期化への取り組み

最後に、経営管理目的で使用するからにはやはり情報の鮮度が重要になり、可能な限り早期に数値を算出できるに越したことはありません。

目安になるのは、3月決算の多くの上場企業が年度末の決算短信開示を4月中に実施しようとしている実務です。これは監査法人による期末監査も経た後のタイミングになるため、実際は4月の中頃には数値のドラフトができている会社がほとんどでしょう。

月次レベルでは制度レベルの詳細な連結修正が求められず経営陣が許容可能なレベルの簡略化をすればよいため、子会社側で数営業日、親会社側で数営業日見て、規模にもよりますが第10営業日~あたりで連結数値のドラフトが出てくればかなり早期化できているレベルと言えます。

早期化のためには、

・そもそも連結仕訳を減らす
・子会社を減らす
・パッケージ数値から自動修正仕訳が可能になるようシステムとパッケージを組む
・各社それぞれの日次レベルでの仕訳精度を徹底する

などの方法があげられます。実態は経理の人たちが休日も対応して回している、というケースが多いですが、ITや仕組みの導入でこれらを緩和していくことがトレンドであるのは間違いないでしょう。

ポイント:連結決算は実務上かなり工数がかかる上、複雑化して専門性が必要になってしまっている。
単に制度対応とするには高コストなので、経営管理目的への活用や、仕組化による早期化・効率化が重要になる。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は経済や会計を理解するにあたり当たり前になりつつある連結会計についてざっくりと紹介しました。細かい内容はともかく、今回で紹介したような基礎となる考え方がわかっていればビジネスマンとしては十分でしょう。

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連結経営の企業グループに関わる方は少なからず学びがあると思うので、休日や夜の自己研鑽のお供に手に取ってみてください。



最後までお読みいただきありがとうございました。

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