特別損失の会計処理 続報 – 会計士協会からの「監査上の留意事項(その4)」をうけて

はじめに

本記事は 2020年4月22日に日本公認会計士協会より公表された「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)」をうけて、特別損失の会計処理のガイダンスが追加されたことをフォローアップします。

 

ベースとなる特別損失の会計処理については以下の記事をまずご参照ください。

不況期の会計:特別損失とは コロナでどのような処理が必要になるか。

公表されたガイダンスの内容

まず、今回のガイダンスでは以下の二点を取り扱っています。

1. 操業、営業停止中の固定費等の会計処理
2. 銀行等金融機関の自己査定及び償却・引当について

このうち、今回紹介するのは1つ目の、「営業停止中の固定費等の会計処理」についてです。

 

このガイダンスのポイントとして、コロナ関係で直接支出した費用に限らず一部固定費についても特別損失として計上可能だという見解が示されたことが大きなポイントになります。

では以下でもう少し掘り下げていきましょう。

このガイダンスで何が認められるようになったのか

前提として、先日の記事で紹介した通り、通常の営業のために発生し続ける固定費(例:店舗の賃料や人件費など)は、あくまで経常的な費用です。

自粛ムードで売上が立たず固定費を回収できないような場合であっても、それはあくまで毎期の営業で通常発生する費用を回収できなかったに過ぎないので、特別な理由がない限り固定費を特別損失とすることは非常に難しいです。

今回のガイダンスでは、政府や自治体の要請等により営業を停止した場合、通常経常費用であるはずの店舗維持費等についても特別損失にできる、と明記しています。

これにより、特別損失として計上できる範囲を直接支出した費用だけでなく固定費にまで拡大しています。

ポイント:通常は経常費用であるはずの店舗運営費などの固定費、工場の操業度低下による原価影響なども、特別損失の要件を満たしうるという解釈を示していること。

注意点

さて、もちろん注意点があり、これはコロナ関係を何でも特別損失にしていい、というガイダンスではありません

注意しないといけないのは、あくまで「政府や地方自治体による要請や声明により」営業やイベントを中止した場合の固定費のみが対象ということです。

したがって、多くの企業では緊急事態宣言が発令された4月以降にしか影響せず、2020年3月までの費用でこのガイダンスを使えるケースはかなり限られてくるかと考えられます。

つまり、次の第1四半期決算(2020年4月~6月決算)では、この規定が使われることが増えてコロナ関連の特別損失を開示する企業が増えるでしょう。

ポイント:固定費を何でも特別に入れていいというものではなく、あくまで「要請等により営業を停止した場合」に限定されているということ。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

最近は金融庁・会計士協会・ASBJの動きが活発なので、また最新情報アップデートがあれば当サイトでもフォローアップします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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