はじめに
今回は公認会計士学習者や監査法人若手へ向けた、「スタッフのうちにやっておくべき8つの習慣」という形で紹介していきます。
私自身入社当初は「これであっているのか・・・?」と悩みながらいろいろ努力していました。この記事は当時の自分へのメッセージでもあります。
今回は監査法人というプロフェッショナルファームに焦点を当て、そのような疑問へのあくまで一例として本記事をお読みいただければ幸いです。
業界勉強を行う
コンサルタントの世界では、若手であっても業界勉強は不可欠な努力のうちの一つと考えられています。
以前コンサル部門の方と仕事をした際にこんなことを言われていました:
「新しい業界のクライアントに行く前には、10冊以上のその業界の本を読んでから伺います。」
この方はコンサル部門の有名なパートナーの方でした。
何冊読むかはともかくとして、クライアントや業界のことを知らないとちゃんとした仕事にならない、というのは会計士にも通じます。
監査の道で成功していくため、会計・監査の専門家であることはもちろん、クライアントのこともしっかり理解することが不可欠です。
何より、クライアントのおかれている業界・競合他社の状況などのバックグラウンドを知っていれば、クライアントと目線を合わせてコミュニケーションをとることができるようになります。

でもいきなり何の本を読めば・・・しかも10冊か・・・と思われる方も多いと思います。
私の場合は少し楽をして、毎年の「会社四季報業界地図」からスタートしています。
業界地図を用いる一番の趣旨は、自分のクライアントやクライアントの競合先との位置関係の把握です。
位置関係がわかったら、個別企業の有報や、業界のノウハウ本などを見ていくというのが、私が一番手っ取り早いと考えているスタイルです。
(半導体業界など、業界や技術自体がそもそも複雑な場合、技術的な本を読むこともとても有用です。)
日経新聞の購読
とてもベタですが、間違いはないです。
クライアントのキーパーソンと言われる方はほぼ確実に日経新聞を購読し、読まれています。
日経新聞の内容はいわばビジネスマンにとっての共通言語と化していて、そこへ食らいつく必要があります。
若手のうちからクライアントの重役と目線を合わせる努力をすることで、会計や監査を超えた信頼関係を築いていきましょう。
株式を買う
会計士には独立性規制があり持分証券の保有が制限されるため賛否両論あるとは思いますが、株式の購入は若手のうちに一度は経験しておくべきことだと思います。
(もちろん法規制や所属団体のルールに則ってください。)
なぜなら、①投資家の目線で情報を見ることできること、そして②経済ニュースが自分に関係のあるものになる、という大きなメリットがあるためです。
また、株式を購入するまでのリサーチ及び購入後のリサーチを行う際に、その会社の開示書類や財務数値を徹底的に見る経験に大きな意味があります。
一度投資家として企業の開示と接したことがあれば、そのような日々の作業の中であっても最終開示が世間にどういうインパクトを持つ可能性があって、投資家たちがどんな情報を欲しがっているのか、つまり情報を必要とする側の立場で考えられるようになります。
そして世間が求めている最終開示に対してインパクトを及ぼす仕事なのだと改めて認識することで、監査という仕事の責任を改めて痛感できるはずです。
「経済情報が自分の財産に影響を及ぼすようになる」→「学習効率を上げること」にあります。
例えば「A社新製品需要好調により業績予想を上方修正!」というニュースが流れたらA社株価は基本上がります。
このニュース、A社の株を持っている人といない人では全然重みが違いますよね?
「自分の生活には無関係だな」「こんなことをしても給料増えないけどな」と思いながら新聞やIR資料を読むのは効率が悪いし楽しくないです。

するとその途端面白いもので、今まで無関係だと思っていた日経のニュースなどを当事者として読むことができるようになり、学習の効率が上がります。
常に情報収集が必要な会計士にとっては、株式投資から得られる経済的なメリットと同じくらい、経済の当事者になることができるというメリットは大きいです。
(くどいですがルールはしっかり守り、必要な届け出などはしっかり行いましょう)
株式投資を証券会社に電話で頼まずともスマホで簡単にできてしまう、しかも少額で個人でもできる、というのはありがたいですね。

次ページ:専門家としての学習・意識面の話
では、次ページではさらに専門家としての学習や意識面で気を付けたい点について見ていきましょう。
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