今回はアメリカのファームでの働き方を踏まえ、在宅勤務について記事にしたいと思います。
コロナウィルスの拡散を重く見たアメリカでは、今週になり多くの企業でフルリモートワーク(完全在宅勤務)の導入が進められており、ついにアメリカのBig4アカウンティングファームでもこのような方針が出てきています。
なお、日本でも以下の日経の記事にもあるように在宅勤務が原則になっています。
EY新日本やデロイトトーマツなど、原則在宅勤務に 3月13日まで
2020/2/27 20:30新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大手の監査法人で在宅勤務に切り替える動きが相次いでいる。EY新日本とデロイトトーマツ、PwCあらたは28日から在宅勤務を原則とする。税理士法人などのグループ各社も対象で、EY新日本とデロイトは3月13日まで。PwCあらたは期限は定めていない。EY新日本とPwCあらたが約8000人、デロイトは1万人超が対象。
太陽監査法人も約900人を対象に3月2日から13日まで原則として在宅勤務とする方針だ。4月以降の監査のピークに備え、感染を予防しようとする動きが活発になっている。出典:日本経済新聞HPより
さて、このように実は日本は2月から原則在宅勤務なので「日本のほうが進んでいるのでは?」と思われるかもしれませんが、実はアメリカではそもそも日本のように場所や労働時間に対して厳密ではなく、日本の監査法人よりもこの状況にうまく対応しています。
今回はこの実体験を踏まえ、明日から使えるリモートワークのための留意点や効率化のための方法を紹介していきます。
アメリカのアカウンティングファームでのリモートワーク
では早速本題です。
実はアメリカのアカウンティングファームでは、そもそも場所や時間に対して日本企業ほど厳格ではありません。
以下でざっと基本情報を一問一答形式でまとめます:
一方、監査はチームでの作業であり、クライアントとのコミュニケーションも重要な仕事・手続きの一つですので、繁忙期などは効率性を考えて現場(クライアント先)で働くという選択をしています。
結果、オフシーズンなんかは朝8時から働いて昼休みを取らず、夕方4時に帰るような人もざらにいます。
①繁忙期(12月~2月ごろ)は全会計士がクライアント先で働くことが通常です。繁忙期は最低11時間ほどの勤務(クライアントチャージ)が求められます。
②閑散期(6月~10月ごろ)はオフィスや自宅から勤務する人が多いです。閑散期は最低8時間の勤務(クライアントチャージ)が求められます。
①残業手当の有無
②終身雇用の有無
一方、日本の監査法人ではマネージャーになるまでは残業手当がしっかりもらえます。
一方日本の監査法人では若手がクビになることはまずなく、パートナーになれなかったシニアマネージャークラスが肩をたたかれるということがあるくらいです。
1. 会社として残業をそこまで厳しく管理する必要がない
→何時間労働時間をつけられても、会社は残業手当を支給しない以上、キャッシュアウトフローにつながりません。
また、残業代がもらえない以上無駄に長く労働する人間も当然いません。特定の従業員が賞与狙いで不当に多くのチャージをしたとしても、効率が悪いとみなされ賞与は逆に減額されます。
→終身雇用ではなく、成果を出し続けることができない場合雇用は約束されていません。
働く場所やどれだけの時間働くか、というはあくまで個人の選択なので、出勤して対面コミュニケーションをとったほうが成果が上げられる、と思えばそうすればよく、良くも悪くもすべて自己責任社会です。自己選択・自己責任の結果が、成果が伴わなければ雇用がなくなってしまいます。
“Flexible work arrangements are perceived by firm management as a good way to attract and retain talent, but it’s only available to those who have proven themselves trustworthy. – Senior manager”,
(出典: Journal of Accountancy February 2020, p.24 – Flexible work strategies for public accounting.)つまり、フレキシブルに働くためにはまずはファーム内での信頼を得る必要があるとのこと。自己責任だからこそ、信頼を勝ち得るまでは誰かの管理のもとで働かないといけないというのはリーズナブルな発想ですね。
体験に基づくリモートワークのメリット・デメリット
さて、今一度リモートワークのメリットとデメリットをまとめると以下になります:
・場所や時間帯にとらわれなくなり、労働者にとって自由な時間が増える
・成果でしか仕事を図れなくなり、不毛な拘束時間は発生しなくなる
まず、労働場所にとらわれない、というのが最大のメリットになるのは間違いないです。
通勤時間が発生しない、自宅でランチを作って食べることができる、家で育児家事をしながら働ける、スーツを着る必要がない、コロナなどの感染症から身を守るなど、場所から解放されることで得られるメリットは計り知れません。
時間帯についてはまだ企業によっては「在宅であっても9時 – 18時は執務にあたること」などとされていることが日本の現状ですが、いずれ柔軟になってくるとは思います。
さらに、労働の評価についても、成果物の有無でしか図ることができなくなります。
「あいつは遅くまで残業していたからやる気がある、よく仕事をしている」とかいう価値観は在宅勤務ではどんどん薄れてきて、①離れて仕事をしていてもいい成果物を素早く出せる人と、②そのようにチームをうまくマネジメントができる人が評価され仕事が集まるようになっていきます。
仕事を効率的に、まじめに取り組んでいる人が正しく評価を受けることができるというのは、組織としてあるべき形ですよね。
・対面コミュニケーションの減少
・快適な労働環境を確保することが人によっては難しい(子供がいる、など)
正直、SkypeやZoomを使用したコミュニケーション(チャットだけでなくビデオ通話も)がビジネスにおいて当たり前になっている今、対面コミュニケーションが無くても仕事は回ります。ただ、チーム内に新人がいるケースなどは、マネージャー側が意識的にコミュニケーションをとってあげないと、彼らのパフォーマンスを保ちにくくなるのも事実です。これは管理する側の意識次第で改善でき、例えば朝・昼・晩にあらかじめグループ電話会議を予定しておく、メールでの報告のルールを決めておくなどの配慮で解消していく必要があります。
そのためには、やはり対面コミュニケーションに勝るものはなく、私自身はリモートワークを推奨しつつも、やはり月に何度かは顔を合わせて仕事をする関係が欲しい、と思ってしまいます。
また、育児家事をしながら働くことができるというのはメリットでありながら、ご家庭の事情によっては集中できる仕事環境に身を置けず能率が下がるリスクにはつながります。
在宅で働くということはそもそも育児をしなければならないなどの各家庭の制約があるケースがほとんどなので、チーム運営においても「日中は集中して働け」や「9時 – 18時でほかの人と同様に仕上げてください」という従来型のタイムマネジメントではなく、一日単位での余裕を持ったマネジメントへの意識切り替えおよび正しい目標設定が必要になります。
具体的には、①管理職の場合はしっかりと一日単位で成果物をチェックする、②作業者の場合は少なくとも一日単位で上席者へ報告できる形に仕上げる、そして③お互いコミュニケーションをとり翌日以降の目標設定を再確認・修正する、というように、少なくとも一日単位での進捗管理を徹底し(できればエクセルなどで見える形で残したうえで)、適宜方向修正できるようにうまく能率を管理することが成功へのキーです。
在宅で少しでも効率的に働く工夫・環境づくり
在宅勤務をチームレベルで成功に導く何よりの秘訣は、先ほど述べたメリット・デメリットを理解してうまくコミュニケーションをとり、適切な進捗管理を取り入れることだと考えています。
次に、個人レベルで成果を上げたい場合、少しでも効率的に働く環境を作るために私が本当にお勧めするのは以下の工夫です。
1. 場所を選ばず二画面作業可能!ポータブルモニター
自宅で作業する際に据え置き型モニターはかさばるので置きたくない派の私にとって、持ち運び可で画質・レスポンスともに良いこのモニターは重宝しています。もちろん出先にも持っていきます。ラップトップと一緒にカバンに入るサイズでいうことなしです。
2. 外部の音・声をシャットダウン!AirPods Pro
リンク
ワイヤレスヘッドホン否定派だったのですが、アメリカ人同僚がほぼ全員持っているのにつられて購入してしまいました・・・。
今となっては、在宅勤務時にはこのノイズキャンセル機能から離れられません。イヤホンをクリックすることでノイズキャンセルを簡単にオフにできるのも非常に優れていて、実際に購入してみると生活ががらりと変わる商品No.1です。
また、Skype会議や急な電話などがかかってきた際にもそのまま問題なく通話ができます。久しぶりに、もっと早く買っておけばよかったと思ったアイテムです。
3. 番外編:家で働くときくらいゆっくりおいしいコーヒーが飲みたい
終わりに
いかがでしたでしょうか。
次の時代で成功していくには、リモートワークのような変化に柔軟に対応し、場所を選ばずとも(場所で人を拘束せずとも)成果を出せる人材(リーダー)になっていくことが不可欠です。
働く場所に制限がなくなれば管理対象は当然海外にも広がっていきますし、国をまたいだチームや仕事の管理力が今後のマネジメントにとって求められるスキルになる日も近いでしょう。
今回の外出自粛を機に、次世代の働き方の練習として、今のうちからパフォーマンスを上げる意識をもって前向きに取り組みたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。