[第2回] Uber 四半期決算に学ぶ、開示のつながりとポイント(2019年6月Q2最新版) – 財務諸表以外の情報の活用 –

Uberの2019年6月までの四半期決算、第2回です。

 

先日の第1回では、Uberの損益計算書を見て、株価下落の背景となった業績の概要を見ていきました。

(参考リンク:[第1回] UBER 四半期決算に学ぶ、開示のつながりとポイント(2019年6月Q2最新版)  – 半期で5000億円以上の赤字の中身とは –

 

今回はさらに一歩進んで、業績の背景を掘り下げていきましょう。

開示書類のおさらい

まずはUberのQ2(第2四半期)決算に関連して開示された書類をおさらいすると、以下の三点になります。

1. Form 10-Q
2. Form 8-K
3. Supplemental data

(それぞれの内容はなんだっけ、という方は、第1回の記事をご覧ください。)

前回は1つめの”10-Q”を用いて、四半期財務諸表から決算の大枠をつかみに行きました。
今回は、”8-K”と”Supplemental data”を見て、その背景を見ていきましょう。

8-Kを見る :最初のサマリーに目を通そう

まずは8-Kから見ていきます。

8-Kは”Current report”と呼ばれます。

株主構成の変更や、業績報告、その他株主に影響ある情報が開示されます。

適時開示書類という位置づけのため企業の状況やタイミングによって開示されている内容はまちまちです。
今回Uberが公表した8-Kは、四半期決算のタイミングであったため、日本でいうところの決算短信のようなものです。

ざっくりした構成は、

①財務数値サマリー
②サマリーへの補足説明
③財務諸表(10-Qより、Income statement, Balance sheet, Cash flow statement, Segment information等)
④非GAAP数値の定義や調整表

となっています。

全体は27ページととてもコンパクトになっていますが、さらにまとまっている①サマリーからしっかり概要をつかむことが大事です。

今回も例のごとく、本物を見てみないことにはなかなかイメージもつかないので早速見ていきましょう。(以下Uber investorページより、一部筆者加筆)

実際の8-Kの1ページ目(①サマリー+②補足説明の一部)

 

よく見ると見慣れない項目が多く記載ありますね。

では実際に見ていきましょう。

8-Kのサマリーに記載されている情報

 

ざっくり何が記載されているかというと、以下の2つです。

 

 

上記のように、①重要と考えられる数値情報のサマリーと、②サマリーに対する説明がなされます。

数値情報は、ご覧いただいた通りすべての財務情報が記載されているわけではなく、かつ財務情報以外の見慣れないものも開示されていますね。

見慣れない数字たちは次項で掘り下げます。

 

財務諸表(10-Q)には出てこなかった数値情報

10Qに出てこなかった数値情報は、大きく分けて以下の2つに分かれます。

1. Gross bookings, MAPCsなどの非会計情報と、
2. Adjusted net revenue, Core platform contribution margin, Adjusted EBITDAなどの分析用数値 (調整後)

があります。

これらは会計上の数値ではないものの、Uberの業績を理解するために開示されているものになり、状況の理解のためにはこれらの活用が重要になってきます。

それぞれの定義はもちろん同報告書内に記載されています。

ただ今回は補足資料である「Supplemental data」を見ながら、重要なもの定義や推移を確認していきましょう。

Supplemental data(追加情報): かゆい所に手が届く追加情報

Supplemental dataとはその意味があらわす通り、”追加”ないし”補足”のデータとして会社が独自に開示しているものです。

第1回でも述べたとおりその内容は企業によってまちまちなのですが、Uberはしっかり開示してくれていて、10-Qや8-Kの理解に役立つ情報が織り込まれています。

そしてこちらの資料は文章での説明よりもグラフを多用した重要指標の推移などに重きが置かれています。

では実際に、重要指標を見ていきましょう。
(以下Uber investorページより、一部筆者加筆)

重要指標その1: Core Platform Gross Bookings(利用総額)

補足すると、グラフのNoteとして下に小さな字で定義がされていますね。

Core Platform Gross Bookingsはその言葉が表すとおり、

「コア事業による総予約金額」、つまり、「ライドシェアサービス、Uber eats等のコアプラットフォームでの利用総額」を意味します。

例えばライドシェアサービスを利用した際に、われわれ利用者は$20払ったとしても、そのうち$15程度は運転手の稼ぎとなり、会計(USGAAP)上のUberの売り上げは$5部分のみとなります。

つまりこの指標は利用者が実際に利用したサービスの総額(上記の例なら$20)であり、財務諸表には表れない、Uberの事業規模(=ユーザーが使ってくれたお金の総額)がわかります。

 

この情報を通じてわかるのは、「Uberサービス全体の利用金額は順調に伸びている」、ということです。

重要指標その2: Core Platform Adjusted Net Revenue(コアプラットフォームからの収益)

一方で、Uberの収益はいかがでしょうか。
いくら全体の利用金額が増えようと、Uber自体に入ってくるお金が増えないのでは投資先としてはネガティブですよね。

この点、2018年Q2→2018年Q3以降、Gross bookingの増加に比してRevenueの増加が鈍化している状態が続いています。

 

重要指標その3: Monthly Active Platform Consumers(月間アクティブユーザー数) とMonthly trips per MAPC(アクティブユーザーあたり月間利用回数)

次は2つまとめて紹介します。
1つ目は、月間のアクティブユーザー数です。

以下の通り、Gross bookingの伸びを下支えすべく、アクティブユーザー数は伸び続けています。

一方、2つめはアクティブユーザー1人あたりの月間利用回数です。

以下のグラフでわかる通り、5.5回/月あたりで頭打ちになってしまっています。

これは体感でもそうなのですが、アメリカに住んでいると基本自家用車を所有しているため、「月に5回程度タクシーに乗っている」と考えると、「そんなものだろう。月に10回以上が一人当たり平均になるにはまだ時間がかかりそう。」という印象を受けますね。
(私のシェアライド利用回数はLyftも含めて月に2、3回といったところです)

これら二つの指標をあわせて考えると、Uberの全体の利用金額の伸びは「アクティブユーザー数の増加」によって支えられており、「一人当たり利用回数」は停滞期に入っている、ということがわかりますね。

重要指標その4: Core Platform Contribution Margin(コアプラットフォームの貢献利益率)

利益面は以下の通り、まだまだ乱高下しており安定していません。

 

 

重要指標その5: Adjusted EBITDA(修正EBTDA)

事業からの利益を示すEBITDAは依然赤字のままです。

 

 

次回へ向けて

さて、今回は8-KとSupplemental dataを用いて決算の背景にある事業の動向をざっくりつかみにいきました。

次回ではもう少しこれらを掘り下げるために再度8-Kなどの説明資料を使いつつ、それぞれの数字の意味と将来予測ついて理解を深めていければと思います。

[第3回] Uber 四半期決算に学ぶ、開示のつながりとポイント(2019年6月Q2最新版) – まとめ –

最後までお読みいただきありがとうございました。

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