公認会計士に英語力は必要?国内系出身だが海外で働くことになった会計士が実態を解説

英語ができることによるメリット

まず、監査法人に限ったことではない全般的なメリットとして、仕事の幅が広がる、というのは間違いありません。

私のシニア時代の話ですが、全く関与していなかった上場準備会社の海外子会社往査にアサインが入り、現地の監査をマネージャーと二人で行う、という経験がありました。
これは単純に英語ができるシニアが当時事業部に全然いなかったため、そのクライアントへの関与経験はなくともいいので英語ができる人に同行してほしい、リクエストでした。

 

このように、英語ができる、ないしできるイメージを社内で持たれることで思いもよらない経験ができたり、そこから仕事が広がっていったりしますので、できて損はないです

 

監査法人内での具体的なメリットとは?
監査法人特有のメリットとしては、以下の点が挙げられます:
①花形Jobへアサインされる可能性が高くなる
②英語を使うジョブのスピードが上がる
③USGAAP/IFRSなどの海外の基準を原文で読み理解することができる
④海外転勤が可能になる

一つずつ見ていきますと、

①「花形Job」という考え方は各法人によってばらつきがありますが、やはり全体として以下の傾向があります

ポイント①:グローバル企業=大企業=監査報酬が高い=出世や海外派遣のチャンスが多い

英語を使える人材がこのようなジョブに投入されやすいので、出世のチャンスが広がる、というものですね。

反対に注意点として、入社時に「IPOを経験したい」「早く成長したいので小規模ジョブをたくさん回したい」という方をしばしば見ますが、社内出世を考えた場合はその低収益性から不利に働く場合があります。これらの背景を理解したうえで本当に行きたい部署を検討してみてください。

 

②については、例え国内Jobだったとしても英文アニュアルレポートの作成を行っている日本企業はたくさんあり、年に数回は英語での仕事が必要になるケースが多いです。

このような場合求められる英語力のレベルは高くないものの、やはり作業スピードには大きな差が生じますので、最低限の読み書きはできるようにしておくことが重要です。

ポイント②:英語読み書きのスピードは英語系の仕事のスピードに直結する。

 

③の海外の基準を原文で読む力、というのは、欧米で開発されている最先端の会計を理解するにあたって特に重要なスキルになります。

また実務面では、海外監査人や海外子会社とのやり取りなどの場面で彼らと同じ基準を同じ言語で参照できればよりディスカッションをリードでき、地に足がついた海外対応力を培えます。

ポイント③:専門家として時に英語原文で基準を理解する力も必要。

 

④海外転勤について、監査法人では「希望制」のため、社内の試験を経て競争後に正式人事決定となります。

メンバーファームから親会社へ出向するようなもので一般日系企業の海外駐在とは構造が逆です(日系:日本親会社から海外子会社へ)。
とてもコストがかかるらしく、行きたくない人が強制的に行かされることはありえませんのでご安心ください・・・。

 

海外のメンバーファームへの出向は経験としても社内評価面でもとても有利に働きます。普段から英語を使ったチームにいる人のほうが、「業務上海外経験の必要性が高い」と判断され、選考で有利に働きやすいですのでチャンスは多いです。

ポイント④:海外転勤は実は狭き門、普段から英語系チームにいることでチャンスは広がる。

英語ができないことによるデメリット

当然メリットの裏返しになり、関与できるジョブの幅が制限されるというのが最も大きいデメリットでしょう。

ジョブの幅が制限されると、監査法人では生き残れない?
そんなことはありません。
・実態として監査クライアントの多くは英語を必要としない国内系のジョブです。
・また、海外系のジョブでも大規模になればなるほど日本語で対応可能な仕事は多いです(英語系の担当者と切り分けられるほど仕事が多い、という意味です)。
したがって、キャリアの道が閉ざされるわけではなく、あくまで海外派遣はどは視野にいれずに戦うことになる、というだけです。つまり英語ができなくてもいろいろと仕事はあるので、すぐに困ることはないです。
昇格で不利?
現状昇格にあたってTOEICの点数などが求められている法人は聞いたことが無いです。
(ただ、一部のBig4で導入予定というのを耳にしました。

注意すべきは、役職が上がるにつれて「英語ができない」ということがデメリットになってきます。
特にマネージャー以上は国内系のJobであったとしてもある程度の規模であれば海外子会社への監査指示や海外出張などから逃れられなくなってきます。
社内での昇進を考えるなら、シニアあたりで最低限の読み書きと英会話スキルを身に着けておいた方が無難ですね・・・。

 

社内の人たちの英語力と学習の状況

さて、次は社内の人たちがどれほど英語ができて、どれほど勉強しているのか見ていきましょう。

シニア以上となると英語できる人ばっかり?
全くそんなことはありません。冒頭にも少し紹介した通り、監査法人入社段階で英語力が高い人は多くありません。ボリュームゾーンはTOEIC500 – 600点程度で、700 – 800点ほどあれば国内系の中では頭一つ出ることができます。

 

TOEICってみんな受けてる?
実は結構受けています。事務所の後押しもあり、体感的には事務所の半分ほどが社内のIPテストなんかを継続的に受けているように感じます。
その他、社内の補助などをうまく利用して継続的にTOEICなどを受験している人はとても増えてきており、入社後に英語力を伸ばしている人はとても多いです。

 

なんで会計士がTOEICを受けるの?
理由はさまざまでしょうが、以下のようなものが多いでしょう:
・業務上の必要にかられて
・将来海外派遣プログラムに申し込むため
・上司やチームに勧められたため
・自己研鑽として

理由はさまざまですが、以下で紹介する豊富な社内研修の恩恵もあり英語力を伸ばしやすい環境であることは間違いありません。

どうやって英語を伸ばしたのか

さて、当記事で申し上げていた通り、私はずっと英語から逃げていて、それでも無理やり上司から受けさせられたTOEICなどは効果が出るはずもなく500点くらいから抜け出せないという状況でした。

このべたべたに日本希望だった私が、TOEICを急激に伸ばした方法は以下にまとめましたのでご興味がある方はどうぞ。私はTOEIC対策にお金をかけたくない派だったので、一般の書籍しか使用しておらず再現性は高いと思います。

TOEIC対策:500~700点で伸び悩んだ人が読むべき克服法

監査法人での英語研修 – 使えるものは全部使おう

さて、記述のとおり現在4大監査法人いずれも英語研修に力を入れており、学生時代留学ができなかった人たちや、英語コンプレックスを克服したい人にとってまたとないチャンスになっています。

実際にどんな制度がある?
法人によって厳密には違いがあるものの、以下のような制度が一般的です。
・海外語学学校短期留学

・英会話スクール費用補助
・文法やライティングスクール費用補助
・オンライン英会話補助
・TOEIC IP無料受験

などなど。特に一つ目の短期留学はとてもおいしい研修で、以前私もこんなツイートをしました。

 

せっかくの制度なので、興味があればぜひチャンスをつかみたいですね。会社の研修をしっかり活用して能力アップできればしめたものです!

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回は会計士と英語の向き合い方について幅広にまとめました。

私自身が

①最初は英語を拒否
 ↓
②業務の必要にかられてしぶしぶ学習開始
 ↓
③海外短期留学へ行かせてもらえる
 ↓
④海外派遣

と、法人の研修のおかげで大きく方向転換した経緯があり、今回の記事にさせていただきました。

多くの職業において、英語に真剣に取り組むことができれば仕事の幅はとても広がりますので、しっかり社内の研修を活用して伸ばしていきたいですね。

英語以外の自己研鑽については以下の記事にまとめていますので、ご参考までにご覧いただければ幸いです。

監査法人 入所一年目の教科書:スタッフのうちにやっておくべき8つの習慣

最後までお読みいただきありがとうございました。

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