海外で出向者として働く会計士の英語力はどの程度必要なのでしょうか。
会計士として会計・監査業務に携わる以上、発信地であるアメリカやイギリスでの仕事を一度は経験したい、と考える人は多いと思います。
今回はそのような方の参考になるよう、一般的にこの業界でどの程度の英語力が求められているのか紹介していきます。
日本人出向者が海外の監査現場で求められる英語力とは
さて、”海外”と言ってしまうと幅広いです。結論は、国によって違います。
欧米の英語圏の場合:要求は高め
私は現在アメリカ勤務ですが、最低限以下のレベルは必須になってきます。
・読み+書き:不自由ないレベルが必要
・聞き+話し:一対一で相手のポイントを聴き取り、要求や解決策を伝えられるレベルが必要
会計監査はコミュニケーションもさることながらドキュメント社会なので、読み書きのスピードと正確さは最低限求められています。メールや調書作成など、上司(=欧米人)が目を通すものなので基本英語です。
会話などのコミュニケーション力は、相手に伝えることができれば流暢である必要やネイティブのようにかっこいい英語である必要はありません。
英語力というよりも、コミュニケーションスキルがあると実は言語の壁は最低限の英語力で超えられてしまいます。
それでも、相手はネイティブなので全然知らない表現や、ものすごい早口の人がいたりして、聴き取りについては継続的な努力が必要になります。
アジア圏その他英語が第二言語の場合:欧米に比して要求は低めだが、現地語も学習必要
英語が母国語の国に比べて、英語が第二言語の国では英語力の要求は低くなります。ただ、その場合も読み書きはできるに越したことはありません。
・読み+書き:不自由ないレベルが必要
・聞き+話し:英語力はそれなりでOK(フィリピン人とのオンライン会話のイメージ)
英語が第一言語でない国では、文書が現地語であったりして必ずしも英語を使う場面が多くありません。また、アジアにある日系子会社などでは社内資料が日本語であることもしばしばです。
フィリピン人とのオンライン英会話をイメージしてもらえればわかりやすいですが、彼らにとっても英語は第二言語であるため、第二言語同士の会話は欧米人との会話より格段に難易度が下がります(ネイティブ特有のスピードや言い回しなどがないため)。
その分、現地の方々との信頼関係構築のためには彼らの言語を少しでも使えるようにする必要があり、英語よりもむしろ現地のことばの習得に力を注ぐケースも多いです。
英語ネイティブと話すのか、英語が第二言語の環境なのかで難易度は大きく異なる。
読み書きは最低限
日本の監査法人からの派遣者の特殊な環境
さて、上記のように記載しましたが、日本の監査法人からの出向者は多くが少し特殊な環境に身を置きます。
それは、海外の日系会社に対するサービスグループです。
一緒に働く人はクライアントや社内も含めてローカルの人間であることが多く英語や現地語の能力が必要になることは間違いないですが、同時に日本語も一部通じてしまう、という特殊な環境で働くことになります。
このあたりは以下の記事でまとめていますのでまだの方はぜひご参照ください:
日本の監査法人から派遣されるための水準
次は、日本の監査法人から海外へ派遣されるために超えるべき要求事項をまとめます。
最近は若手で海外に行きたいと名乗りを上げる人が減ってきているようなのですが、4大監査法人の海外派遣は原則自主希望制で、法人命令ではありません。
自主希望を出すにあたり超えるべきハードルを箇条書きにすると以下です:
・勤務年数:おおむね4年超
・グローバルなジョブで働いている、もしくは海外出向経験後のビジョンが明確
・TOEIC:860点以上(多くの希望者は900点以上)
・現地との電話面談に耐えうる英語会話力(TOEIC S/Wを採用している会社もあり。7~8割程度の得点が目安)
細かいところは違うかもしれませんが、自社含む4大監査法人それぞれの知人から聞いた出向のための要件は上記のようなものがメジャーです。
形式要件としてTOEICは最低860点程度は求められており、いったんここが足切りになっているのはどこの法人も同様のようです(アジア派遣者などこれを下回るケースあり)。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
監査法人でもTOEICが結構重視されており、ハードルもやや高いと感じるかもしれませんが、海外で働くことを念頭にするとTOEIC900点レベルの語彙力でもまだまだ足りない、というのも事実です。
かくいう私も英語は全然得意ではなく、海外派遣のためにがんばってTOEIC500点から900点まで伸ばしたタイプです。
次回はこの辺りの英語学習法について紹介していきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。